現代医学的な肩こりの考え方
項部から肩甲上部、肩甲間部に及ぶ範囲の主観的に詰まったような、こわばったような不快な感じを総称したものである。
肩こりは、日々の生活の中での単純な疲労として最も日常的にみられる症候であるが、
頸椎疾患をはじめ、耳鼻科、眼科、歯科疾患、さらには内科疾患からいわゆる不定愁訴(更年期障害、自律神経失調症)にいたるさまざまな病気の主訴として訴えられることがある。
鍼灸の適応となるもの
もっとも多く見られる、日常的な身体的・心理的疲労に起因する肩こりが鍼灸治療の最適応症となる
【病態】過剰使用による筋疲労、精神的緊張、自律神経の影響など機序は複雑に入り組んでいる
【症状】頚肩部や肩甲間部にこわばった不快感を感じるものから痛みにいたる症状を訴える
【所見】愁訴部の圧痛や筋硬結以外に特徴的な所見はない
【治療方針】頚肩部、肩甲間部の圧痛や硬結が第一の治療点となる。精神安定や自律神経調節などが必要な場合もある
【処方例】天柱、風池、肩井、膏盲、身柱
このほか、頸椎症やいわゆる不定愁訴なども適応になる。また内科疾患、耳鼻科、眼科、歯科疾患などが基盤にあっても、原因疾患が軽症のものは対照的に適応になる。
東洋医学的な肩こりの考え方
肩こりとは頚項部から肩部にかけての不快感、重圧感、こり感を主とする症状である。
疼痛や圧痛を伴うものもある。
【分類】肩こりは背部に寒邪をうけたり、筋肉の疲労、精神的・肉体的過労、眼精疲労などにより起こる。
また婦人科疾患、高血圧症、低血圧症、動脈硬化など多くの疾患にもみられる。東洋医学では、その原因の違いにより次のように分類している。
①風寒の邪による肩こり…
風寒の邪が太陽、陽明経に侵襲し、そのために営衛の運行が悪くなり、頚肩部の経脈が拘急すると肩こりが起こる。
→風寒の邪による悪寒などの表証を伴う
②肝陽の更新による肩こり…
陰虚のために肝陽が亢進し、頭頚部に上衝すると肩こりが起こる。
→高血圧症によくみられ、肝陽の亢進によるめまい、口苦、目の充血、顔のほてりなどの症状を伴う
③肝血の不足による肩こり…
眼精疲労や病後、産後により血虚となり、そのために頚肩部の経絡がうまく栄養されず、拘急すると肩こりが起こる。
→肝は筋を司っているが、肝血虚のために頚肩部の経絡がうまく滋養されないと、筋の柔軟性が失われ拘急して肩こりが起こる。また肝血虚による眼精疲労、目のかすみ、
眼の乾き、視力低下などの症状を伴いやすい。頭顔面部の血が不足すると、顔色は黄色く、つやがなく、めまいなどの症状がおこる。
④寒飲による肩こり…
平素から胸郭部に寒飲が停滞していて、そのために胸部の陽気がうまく動かないと背部に重圧感や拘急が起こり、頚項部にも波及する。
→寒飲などによる胸悶、喘息、めまい、軽度の浮腫などの症状を伴う。
⑤気滞血オによる肩こり…
情志の失調などにより肝の疏泄機能が悪くなり、そのために肩部の血行が悪くなると肩こりが起こる。
また長時間の不良姿勢や外傷などにより肩部局所に気滞血オが生じて起こるものもある。
→気滞血オによる胸脇苦満・疼痛、よくため息をつく、月経不順などの症状を伴い、情緒の変かや月経前後に増強するものもある。
参考資料 東洋医学臨床論
鍼灸ことり堂の肩こりの考え方
軽い肩こりであっても、すべては五臓(肝心脾肺腎)の影響があると考え、おなかを中心とした全身治療を行います。
また経絡の走行から考えても肝の影響は大きいですが、様々な経絡のかかわりがあり、
どの経絡が影響しているかはお一人お一人ちがいますので、実際に診断し、診断結果に沿った施術を行います。
また逆に別の主訴でいらしていただいたお客様も、肩こり、首こり、背中のこりはすべてチェックいたします。
肩こりが影響する範囲は大きく、時に複雑そうにみえる症状も、肩こりが改善すると共に良くなることが多々あります。
現代では肩こりがない人を探す方がむずかしいですね。
ただ、局所治療(肩だけをやわらかくする)をしても、すぐにまた肩こりは戻ります。
簡単そうにみえても、いろいろなことが絡んでいるのが肩こりです。
目、頭、手を酷使する現代では肩こりをゼロにすることは難しいですが、
からだの大本からアプローチし、
肩こりで苦しまない、日常生活に差し支えないようなおからだを目指していきます。
大本の内臓、五臓を改善した上で肩こり治療をすることが大切です。